「取引先への迷惑を最小限にするため廃業を選んだ」

深刻な北海道の後継者不足 休廃業・解散の前の対策

2022/1/23

 

 

中小企業の経営を引き継ぐ人材不足が全国的に課題だが、北海道の後継者はより深刻だ。信用調査会社の報告によると、令和3年の北海道の後継者不在率は71・0%で、全国平均の61・5%よりも10ポイント近く高い。道内で事業承継を支援する団体の関係者は「相手(承継先)が見つかるまでに時間がかかるため、早めの後継者探しが重要」と指摘する。

 

「道内唯一」も廃業

 

札幌市内で金属の亜鉛メッキ処理を手掛ける富士溶融工業の遠藤友也社長(67)は昨夏、廃業という形で67年の会社の歴史に幕を下ろすことを決めた。

 

道内で唯一、ボルト類や座金など小物のメッキ処理ができる企業として強みを持っていたが、収益の主軸だった公共事業関連の受注が減少。設備管理や人件費などのコストは変わらず、厳しい経営環境の中で熟慮を重ねた結果という。

 

当初はM&A(企業の合併買収)や経営統合が視野にあった。事業承継の申し入れもあったが、業界の先行きが明るくないことや、後継者や売買先探しに時間がかかるリスクを考えて断念。倒産の可能性も想定し「取引先への迷惑を最小限にするため廃業を選んだ」と語る。

 

道内では同社のみの業態だったこともあり、取引先の一部はメッキ処理が必要な製品の取り扱いをやめた。道外企業に依頼すると、輸送費などコスト増が避けられず収益性が下がるからだ。

 

「寂しい思いはある。もっと早くに引継ぎとか考えていれば違った道になっていたのかもしれない」。遠藤さんは長年使ってきた炉に手をかけながら語った。

 

高齢化が拍車

 

大手信用調査会社の帝国データバンク札幌支店などによると、全国の中小企業経営者の平均年齢は令和2年の調査で60・1歳。北海道は60・9歳だが、全体の6割以上は60-70歳以上で「後継者難」が高齢化に拍車をかけているという構図がある。

 

同社のリポートでは、新型コロナウイルス禍の影響で後継者問題に向き合う企業は全国的に増えているという。だが、道内では70代を除いたすべての年代で後継者不在率が上昇。70代以上の経営者の2人に1人は後継者がいないというデータもある。

 

道内では高齢化や後継者不在を理由に休廃業や解散をする中小企業が年間1300件前後に上る。この動きに歯止めをかけようと、経済団体や金融機関が相談業務やセミナーなどを開催しているが、支援団体の関係者は「周知がまだ不十分」として一層の情報発信の必要性を感じている。

 

60歳前後から準備を

 

北海道の中小企業を対象に、無料の相談業務などを行っている北海道事業承継・引継ぎ支援センター(札幌市)には年間300件前後の新規相談が集まる。訪れる業種は介護・福祉をはじめとするサービス業や建設業、製造業など幅広い。全体の7割以上は従業員10人以下で、6割は売上高1億円未満の中小企業だ。

 

統括責任者の瓜田豊さん(70)は「廃業による地域経済への打撃は少なくない。特に地方都市は雇用環境にも影響しやすく、積極的な事業承継支援が重要になる」と強調する。

 

道内で後継者不在率が高い背景として「経験的には世代交代を考え始める年齢が高い傾向がある」と指摘する。後継者がいない企業経営者に対し、60歳前後からセミナーなどを活用した事業承継の準備をするよう呼びかける。

 

札幌市では今月25日に「廃業を決断する前に考えるべきこと」と題した事業承継セミナー(オンライン参加可)が開催予定など、さまざまなイベントが計画されている。こうした情報収集も早期の後継者確保の一助になりそうだ。

 

「事業承継セミナー」の問い合わせはビジネスマーケット(03・6452・9501)。(坂本隆浩)

 

 

 

 

 

 

 

 

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