展示会「国際サステナブルグッズEXPO春」「サステナブルファッションEXPO[春]

パイナップル、コーヒーかす、漁網から生まれた「プラ代替」「アップサイクル」素材の今:サステナEXPO春

Apr. 11, 2022,

 

www.businessinsider.jp

 

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撮影:山﨑拓実さん

 

2022年4月6〜8日、東京ビッグサイト(東京・有明)で、サステナブルをテーマにした2つの展示会「国際サステナブルグッズEXPO春」「サステナブルファッションEXPO[春]」が開かれた。

 

両会場には、プラスチックに代わる再生材や、従来は捨てられていた“ごみ”を新たな製品として再生させるアップサイクル素材など、多種多様のサステナブル製品が集結。展示ブースは多くの商談客で賑わった。

 

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繊維商社タキヒヨーは「わたしたちクズでした」とインパクトのある展示で、これまで捨てられていた裁断くずの再生利用をPR。 撮影:湯田陽子

沖縄発、パイナップル葉のストロー

 

沖縄のスタートアップ、FOOD REBORN(フードリボン)は、パイナップルの葉からつくった天然成分100%のストローとカトラリーなどを出展した。

 

2017年創業の同社はこれまで、パイナップルの果実収穫後に捨てられる葉から繊維を取り出し、オーガニックコットンを混紡した生地を製造してきた。

 

フードリボンの社長、宇田悦子さんはこう話す。

 

「私たちの強みは、パイナップルの葉から繊維を取り出す技術。研究開発によって、天然繊維の代表・コットン並みの価格を目指しています」(宇田さん)

 

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フードリボンのパイナップル葉繊維ストロー。通常の口径(左奥)とタピオカ用(手前右)がある。よくある紙製ストローのボソボソ感がなく、「3日間水に浸したままでもふやけない」(宇田社長)という耐久性が特徴。通常口径タイプは同社ECサイトで一般向けにも販売している。 撮影:湯田陽子

今回出展したストローは、衣料生地用の繊維を取り出した後の残渣(ざんさ)をさらに活用し、とうもろこし由来のバイオマスプラスチック「ポリ乳酸(PLA)」と配合してつくられている。2021年5月に沖縄で発売、すでにホテルや飲食店など約100社で使われているという。

 

2022年4月施行のプラスチック資源循環法では、ホテルや飲食店、コンビニといった事業者が、サービスの一環として提供するストロー、スプーンなど12品目を特定プラスチック製品に指定。有料化や再生素材への切り替えを促し、使い捨てプラスチック使用量の削減を目指している。

 

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今回の出展にあわせて発表したカトラリー(スプーン、フォーク、ナイフ)。ストローと同じく、パイナップル葉繊維ととうもろこし由来のバイオマスプラスチック、ポリ乳酸を配合してつくられている。 撮影:湯田陽子

そうした中で指摘されているのが、バイオマスプラスチックなど再生素材の生産不足や価格の高さだ。宇田さんによれば、中には1本19円という単価の紙製ストローを導入しているホテルもあるという。

 

一方、フードリボンのパイナップル葉ストローは、1ロット(6000本)の1本あたり単価が3円(120ロットの1本あたり単価は2.5円)。耐久性も含めた品質や素材にもよるため一概には言えないものの、同社の製品は、他社の生分解性樹脂100%のストローと比べても「高くないというのが結論」(宇田さん)という。

 

コーヒーかすを配合したタンブラー

 

フードリボンのストローに配合されているバイオマスプラスチック「ポリ乳酸」は今、プラスチック代替素材として脚光を浴びている。

 

ポリ乳酸は通常のプラスチックとは異なり、石油ではなく植物のデンプンや糖からつくられる植物由来の樹脂だ。自然界に存在する微生物によって水と二酸化炭素(CO2)に分解される性質(生分解性)を持ち、焼却時に排出するCO2はポリエチレンやポリプロピレンといったプラスチック素材の中で最低レベルとされる。

 

また、分解時に出るCO2も、植物(フードリボンのストローではパイナップル)の成長過程で吸収するCO2と相殺されるため、CO2排出量が実質ゼロ(カーボンニュートラル)になるというメリットもある。

 

サステナブルな素材として注目されるポリ乳酸製品は、レジャー・アウトドア用品としても人気のようだ。

 

オリジナルグッズの企画・開発を手掛けるアイグッズは、コーヒーを淹れたあとの出しがら(コーヒーかす)をポリ乳酸に配合したコーヒー用タンブラーなど新商品4種を発表した。

 

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アイグッズの「SUS coffee PLA tumbler」は、ポリ乳酸にコーヒーかすを約15%配合。新商品4種のPRを兼ねて、クラウドファンディング「マクアケ」で先行購入を開始したという。
撮影:湯田陽子

アイグッズはこれまでもコーヒーかすを再利用した商品を開発してきたが、石油系プラスチックの代わりにポリ乳酸を使ったのは今回が初めてだという。グッズディレクションチームの宮本卓明さんは、今後は「原料のコーヒーかすをどう集めるか」が重要になってくると話す。

 

「現在は中国で製造している関係で、コーヒーかすも現地で調達しています。今後は日本国内の企業さまと連携して国内で集め、来年中には“国産”コーヒーかすの商品をリリースしたいと思っています」(宮本さん)

 

バイオプラスチックオーガニックコットンがふわふわ

 

ポリ乳酸製品は、ファッション関連のブースでも注目を集めた。

 

繊維メーカー大手のユニチカは、ポリ乳酸を独自の技術で改質・成形した素材「テラマック」を1998年に商品化。以来、ポリ乳酸繊維で業界をリードする企業として知られる。

 

ユニチカトレーディングは今回、テラマックを使用した幼児向けの食器のほか、オーガニックコットン糸にテラマック糸をより合わせた独自素材「ソフバルグリーン」のタオルやパジャマ、ベビー用品などを展示した。

 

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ふわふわした手触りが特徴のユニチカソフバルグリーン製品。洗濯するたびに糸のよりがほどけて空気を含み、ふっくらしていくという。 撮影:湯田陽子

ソフバルグリーンは、オーガニックコットン糸により合わせたテラマックの糸が染色工程で乳酸などに分解され、オーガニックコットンだけが残る。その結果、オーガニックコットン糸が空気を含んで広がり、ふっくらするという。

 

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白が基調のユニチカ・ブースでひときわ目を引いたカラフルな幼児向け食器。とうもろこし由来のポリ乳酸でつくられている。 撮影:湯田陽子

使用済み漁網をアップサイクル

 

カーペットタイルリサイクル事業を手掛けるリファインバースは、海洋プラスチックごみ問題に取り組む企業として注目されている。

 

全国各地の漁業者や漁網メーカーとネットワークを築き、廃棄される漁業用網(漁網)を回収し、再生ナイロン樹脂「リアミド」(ペレット)にアップサイクル。素材としてメーカーに提供し、衣料やメガネフレーム、自動車部品など、さまざまな製品が誕生している。

 

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漁網(手前右)をアップサイクルするリファインバース。同社の再生ナイロン樹脂「リアミド」は豊岡鞄JINS(プロトタイプのサングラス)といった身近なブランドをはじめ、数多くのメーカーに提供されているという。 撮影:湯田陽子

リサイクルされていないバージンナイロンと同等の品質というだけでなく、通常の漁網用バージンナイロンと比べ、製造時のCO2排出量を約85%削減できるという。

 

大阪の下町から再生PETシューズ登場

 

大阪の下町・生野区に本社を構えるシューズメーカー・リゲッタは、再生ペットボトル素材を採用した新シリーズ「SDoGs(スゴィヌ)」を出展した。

 

ラインナップは、スニーカーやサンダルなど5種類。アッパー(靴底以外の部分)表面に再生ペットボトル素材を使用している。スニーカーかサンダルかでアッパーの面積が異なるものの、1足あたり平均約5本分のペットボトルでつくられているという。

 

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SDGsと犬(Dog)を組み合わせて名付けたリゲッタの「SDoGs(スゴィヌ)」。アウトソール(靴裏)に犬の鼻、尻尾、肉球などのデザインを施している。 撮影:湯田陽子

販売開始は5月後半の予定だが、展示会などでの評判は上々のようだ。社長で靴職人の高本やすおさんは、今後の展開についてこう話す。

 

「今回の5点は入り口として再生ペットボトルを使っています。今後はより多くの再生素材、環境に優しい素材を試しながら商品開発し、このスゴィヌブランドで展開していきたいと思っています」(高本さん)

 

sustainable expo 2022 spring banana cloth

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日鉄物産繊維事業と三井物産アイ・ファッションが統合して2022年に誕生したMNインターファッションは、伐採されたバナナの茎からつくる天然繊維「BANANA-CLOTH」をアピール。 撮影:湯田陽子

 

(文、写真・湯田陽子、動画・山﨑拓実)方々の記事でした!

 

編集部より:初出時、フードリボンの宇田社長のコメントとして「コットン並みの価格を実現しています」としておりましたが、現時点では未発売のため「コットン並みの価格を目指しています」に改めています。2022年4月12日