プロデューサーが〝聖〟を取りましょうと言ったことで

秘話再録 名曲プレイバック

芹澤廣明氏が語る「少女A」 もともとは沢田研二のために書いた詞と日活ロマンポルノの売れっ子女優さんのための曲

2022.5/3

 

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ヒット曲の舞台裏に再び光を当てる2日目は作曲家、芹澤廣明氏(74)が語る中森明菜の「少女A」(1982年)だ。

 

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「あの曲は、もともとは『蒼いシャガールの絵』って歌詞がついていたんです」

 

それが「少女A」だ。デビュー曲から一転、ロックサウンドと背伸びした女の子の心を歌ったこの曲で明菜はトップアイドルとなる。芹澤氏にとっても作曲家として歩き出す第一歩となった。

 

「でも、詞がつまらなくてね。原稿用紙2枚ぐらいあるの。仕方ないから適当につまんで、メロディーを考えたんだけど。日活ロマンポルノの売れっ子女優さんのための曲だったんだけど、歌が難しすぎてお蔵入りになって」

 

それがなぜ明菜のもとにいくのか。話は続く。

 

阿久悠さんの事務所のマネジャーさんがワーナーに持っていったんです。そこで、作詞家の売野雅勇さんが現れて、もともとは沢田研二のために書いたという詞を出してきたんです。これが『聖少女A』って詞だったの。プロデューサーが〝聖〟を取りましょうと言ったことで『少女A』になった。それが明菜のシングルに選ばれたんです」

 

そんないきさつを経て、この曲は中森明菜の手に渡る。

 

「そのときはまだ誰もこの曲があんなに売れるなんて思っていなかった」と明かす。しかし曲は大ヒット。

 

「売れた翌月から『先生』って呼ばれるようになって。作曲家でやっていこうと思ったのはそこからでしたね」

 

芹澤氏はCMソングも多く手がけていた。それが存分に生かされるのがアニメソングだ。主題歌なら約1分半でまとめなければならない。しかもアニメの世界観を生かしながらだけにセンスも問われる。

 

アニメ「タッチ」の主題歌「タッチ」(85年)は、マドンナみたいな曲という発注を受けていた。そして、真っ先に生まれたのが、あのギターのサウンドが印象的なイントロだった。

 

「あれを作るだけで1、2時間は考えたかな。オンビートかオフビートかでも悩んだし。で4小節にまとめたの。アニメのイントロは4小節じゃないとダメなんです。イントロが長いと曲が入らないでしょ」

 

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芹澤廣明(せりざわ・ひろあき) 作曲家。1948年1月3日生まれ、74歳。横浜市出身。ミュージシャンとしてデビューも果たすも、ヒット曲に恵まれず、75年に解散。作曲家としては「少女A」「涙のリクエスト」「タッチ」などヒット曲多数。