三種の神器、カメラ、レーダー、そしてライダー

連続した危険回避や離れた障害物も検知 一つ頭抜けた日産の次世代運転支援

2022.5/6  木下隆之さんの記事です!

 

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100年に一度という自動車の変革期の象徴が、動力源の電気モーター化と自動運転ではないかと言われている。特に自動運転に至る過程においての運転支援技術は、死亡事故ゼロを目指す交通社会において急がれる課題。それに向かって各社凌ぎを削るなか、かねてから高速道路の単一車線上の手放し運転支援技術「プロパイロット」の開発を積極的に推し進め、運転支援技術に磨きをかけてきた日産は先陣争いの最中だ。

 

「リアルワールドでの認知性能」

 

20世紀では夢物語に思えていたような「死亡事故ゼロ」も、にわかに現実的になりつつある。今回日産が公開した「次世代運転支援技術」を体験して、近い将来への明るい光を見たような気がした。

 

日産が一歩足を踏み出したのは、リアルワールドでの認知性能である。これまでの自動運転技術は、ごく限られた環境での認知性能に限られていた。障害物を検知し、急ブレーキをかける。ステアリングが自動で反応し、危険を回避する。そういった性能も形にはなったが、たとえば障害物を緊急回避した直後にもう一つの危険が迫っているような場面での対応は遅れた。だがそんな複雑な状況に技術を投入したのである。

 

今回の体験テストでもそのあたりの実用性を確認している。路地からの飛び出しに対しては自動ステアリングで緊急回避に成功した。そしてさらに、回避した車線に飛び出してきた人(ダミー人形)に対しては急制動で対応した。

 

“意地悪”なテストでも有効性が確認できている。視界を遮るミニバンの背後を走行中、ミニバンが急旋回、すると正面からタイヤが転がってきた。それをも回避。「さらにその先で路地からクルマが飛び出してきた」といった、二重三重の危険に対しても反応してみせたのだ。

 

300メートル先の障害物も検知

 

さらには、対向車線のクルマが跳ね飛ばしたドラム缶が宙を舞って向かってきた、といった3次元の障害物に対しても反応するという。障害物認知機能に欠かせない三種の神器、カメラ、レーダー、そしてライダー(LiDAR)。特にライダーの進化が著しい。レーザーを照射して跳ね返ってくる時間と距離から物体の形と方角を認識する次世代ライダーを開発しているのだ。これによって、3次元スキャンで再現したかのように正確に環境が把握できるようになった。

 

その精度は優れている。路面に低く転がっているパレットのような、高さ10センチほどの障害物も認識した。そればかりか、300メートル先の障害物をも検知している。これによって実現するのは、瞬間的な危険回避能力だけではなく、はるか手前から安全にゆったりと障害物を避けることができる、日常に寄り添う自動運転である。「リアルワールドでの運転支援技術」と言われるのはそれだ。

 

たとえば、目的地をとあるマンションに設定したとする。次世代ライダーが交差点や障害物を3Dプリンターで切り刻んだかのように把握することで、安全に目的地に向かう。そればかりか、エントランス前に横付けして停止する。これまではマンションの前の路上にしか反応しなかったのに対して、より正確に詳細にクルマを導く事が可能になっている。将来的には無人車が荷物を配達してくれるようにもなるだろう。そんな近未来を予感させる。

 

次世代ライダーの開発を各社が力を入れている。だが、最大の課題は価格である。一基100万円ほどだと言われている。価格低下が急がれる。

 

【クルマ三昧】レーシングドライバーで自動車評論家の木下隆之さんが、最新のクルマ情報からモータースポーツまでクルマと社会を幅広く考察し、紹介する連載コラムです。更新は原則隔週金曜日。アーカイブはこちら。木下さんがSankeiBizで好評連載中のコラム【試乗スケッチ】はこちらからどうぞ。

 

 

 

 

 

 

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