「給与は毎年あがる」という常識が覆ったのがバブル崩壊後の1993年。

平均年収433万円…振り向けば「韓国」が迫る「サラリーマンの給与」悲惨な手取り額

2022年7/27(水)

 

日本人の給与はあがっていない……よく聞くフレーズですが、世界の国と比較すると、そんな現状がさらに悲惨であることが浮き彫りになってきます。みていきましょう。

 

こんなに給与があがらない国は世界でも珍しい

 

国税庁『令和2年民間給与実態統計調査』によると、会社員(1年勤続者)の平均給与は433万1,000円。男女別にみていくと、男性は532万2,000円、女性は292万6,000円でした。また正社員に限ると、平均515万2,000円。男性だと561万1,000円、女性では382万8,000円です。

 

最近、安倍晋三元首相襲撃事件を機に、改めてアベノミクスの功績について議論されていますが、そのひとつをあげるとするなら、平均給与の上昇があげられるかもしれません。

 

同調査で日本のサラリーマンの平均給与の推移を見てみると、「給与は毎年あがる」という常識が覆ったのがバブル崩壊後の1993年。その後、4年連続で給与総額は前年比プラスを記録するも、不良債権問題が本格化し、潰れるはずがない(潰すはずがない)といわれていた大手金融機関が相次いで破綻した1998年、再び、日本のサラリーマンの平均給与は前年比マイナスに転じます。2000年代に入っても、

リーマンショック東日本大震災が起こり、「給与があがる」を経験しているサラリーマンはどんどんいなくなっていったのです。

 

どん底まで落ちた日本経済、そしてサラリーマンの給与ですが、2013年にプラスに転じます。アベノミクスにより、6期連続で前年比給与増。2000年代に入り12%ほど給与水準は落ち込みましたが、2013~2018年の間に5%ほど戻しました。「給与なんてあがらない」が常識と化した、バブル以降、久々に「給与はあがる」という感覚を呼び戻したわけです。

 

30年以上も「給与があがらない」という状況下にあった日本。その間に、世界と比べて散々たる惨状になっていたことは、誰もが知るところです。

 

平均年収(実質ベース・購買力平価換算)を比較してみると、バブル崩壊直前の1990年、日本の平均年収は3万7,370米ドル、主要国で12位でした。それが2021年、日本の平均年収は4万0,489米ドルで主要国のなかで20位という水準に。注目すべきは、その上昇幅。他の国と比べて、明らかに日本の上昇幅が低いことが分かるでしょう。

 

【平均年収(実質ベース・購買力平価換算)】

 

■2021年

 

1位「スイス」98,229米ドル(185.2%)

2位「アイスランド」92,176米ドル(229.7%)

3位「ルクセンブルク」83,320米ドル(161.2%)

4位「米国」74,738米ドル(153.2%)

5位「デンマーク」73,553米ドル(168.9%)

6位「ノルウェー」72,740米ドル(223.0%)

7位「オーストラリア」66,802米ドル(147.4%)

8位「アイルランド」61,119米ドル(227.5%)

9位「オランダ」60,326米ドル(112.4%)

10位「カナダ」59,155米ドル(146.0%)

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20位「日本」40,489米ドル(108.3%)

21位「韓国」37,195米ドル(168.6%)

 

出所:OECD

 

※(かっこ)内は対1990年比

 

さらにOECDによる、2021年、各国の賃金指数(1995年を100とした場合)をみていくと、調査対象である世界主要33ヵ国のうち、唯一日本だけが100を切るという惨状。「アジアで一番の経済大国」と言葉を拠り所にしてきた人は多いでしょうが、サラリーマンの給与は、いまや振り向けば韓国。「アジアNo.1」の地位から転落間近です。

 

手取り額はもっと減っている!?日本のサラリーマン、残酷な実情

 

これらの金額は、すべて給与からの天引き前のもの。サラリーマンの給与から天引きされるのは、リタイア後を見据えた「厚生年金」、失業した時に再就職の支援を受けるための雇用保険、病気や怪我などをしたときのための「健康保険」、さらに所得税」「住民税」といった税金、そして40歳になると支払いが始まる介護保険といった、大きく6項目です。

 

ただ高齢化が進む日本において、税金やら保険料やら、さまざまなものが増額の一途を辿っています。

 

協会けんぽ政府管掌健康保険)の健康保険料率の推移をみていくと、2003年8.20%だったものが、2012年には10.00%となり、現在に至ります。また2000年に0.60%だった介護保険料は、2022年度は1.64%と大きく増えました。

 

また税金の増額も。消費税は1997年4月に3%から5%になったあと、2014年4月から8%に2019年10月からは10%(軽減税率対象物は8%)に増税されました。総務省家計調査によると、勤務先収入に対する消費支出の割合は、2002年17.2%だったのが、2021年には18.9%に。徐々にではあるものの、私たちの負担は大きくなり、その分、手取りは減り、消費にまわせるお金は少なくなっているのです。

 

前述の国税庁の調査によると、日本のサラリーマンの平均月収は37万4,500円。手取りにすると27万~29万円ほどになり、およそ8万~10万円ほど天引きされるというのが平均です。その天引き額は徐々にではありますが、確実に増えていっています。

 

さらに昨今の値上げラッシュ。政府は賃金アップを重要施策にあげているものの、その効果が賃金に反映されるようになるまでタイムラグがあるでしょう。

 

このジリ貧から脱却するために「貯蓄から投資へ」というスローガンがパッと頭に浮かびますが、ギリギリいっぱいの生活をしている人にとっては、あまりに非現実的な話です。

 

できることといえば、「副業OKなら副業を始めてみる」「無駄な保険はないか? 通信料は圧縮できないか? 家計を見直してみる」、さらには「大人のこづかいを下げる」といったところでしょうか。血がにじむような努力を覚悟しなければならないようです。

 

 

 

 

 

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