食料安保の目的は確保だけでなく貧困撲滅でもある
2022年9月12日(月)
【食を考える】熱帯びる食料安保、足りない視点
ロシアによるウクライナ侵攻を契機に、食料安全保障への関心が高まっている。新型コロナウイルス感染拡大による国際物流の混乱や異常気象で食料価格が高騰。「万一の時の食べものをどう確保するのか」という懸念が現実味を帯びてきたからだ。
だが、本来の食料安保は不測の事態に備えるだけでは不十分。人々がふだんから安心して食生活を送ることができるかどうかが世界標準の物差しだ。国内の議論は食料の「供給」だけに焦点が当たり、食べる人たちの「権利」を置き去りにしているように見える。
▽安保強化の大合唱続く
食料安保強化の大合唱が続いている。
自民党の茂木幹事長は7月末、講演の中で「海外から(食料が)安く安定して入る時代は終わった」と強調。「(党として)自給率の向上や過度な輸入依存から脱却など、食料安保強化に向けて思い切った予算を確保したい」と述べて、万一の事態に備えるよう政府に注文した。
8月の岸田政権の内閣改造で入閣した野村哲郎農相は就任最初の会見などで、食料安保の必要性を繰り返し強調し、輸入に依存している麦や大豆を国内で増産する意向を表明している。
JAグループの中家徹会長も8月の会見で、「すでに、安い農畜産物を安定的にいくらでも輸入できる時代は過去のものとなった。生産資材の高騰により、国内農業も大変厳しい。食料安保強化は、農業者のみならず、国民生活にとっても重要課題だ」と主張。消費者にも国内で生産する農産物を増やしていくことへの理解を求めた。
食料安保重視の発言はいわゆる農業関係者に限らない。
日本経団連の戸倉雅和会長は5月の定例会見で「ロシアによるウクライナ侵略で国民は、国の安全保障、エネルギー安全保障、食料安保の重要性を強く認識するようになった。エネルギーと食料双方の自給率を高める検討を加速すべきである」と発言している。
今年2月に急騰していた世界の穀物・油糧種子相場は、夏場になってやや落ち着きを取り戻しているものの、依然として昨年や平年を大きく上回る。国内では食料品や外食価格の値上がりが相次ぐ。
日本は食料自給率が38%(カロリー換算)と低く、海外の需給ひっ迫を国民が心配することは当然だ。コロナ禍の最中、マスクやワクチンの不足で各国が奪い合いになったことは記憶に新しい。
▽農水省は具体的な対応手順
農水省は「食料の安定供給に係る主要な不測の事態に対する具体的な対応手順」を定めている。日頃から国内生産を増やし食料自給率を上げて海外への依存度を下げる、国内備蓄を増やす、海外情報をきめ細かく調べるなどの対策を進めているという。
その上で緊急に食料が足りなくなるような事態になったら、農地で面積当たり熱量効率が高いサツマイモを栽培したり、米穀の割当・配給制度を導入したりして国民生活への影響を最小限に抑える段取りだ。
これら対策のほとんどが、緊急事態の食料不足に対処することに集約されている。つまり食料の供給をどう確保するのかが、食料安保の最大の任務という発想だ。
しかし、国際社会が定める食料安保の捉え方は異なる。
国連食糧農業機関(FAO)による食料安保の定義は、次のようなものだ。
「すべての人々が、活動的で健康的な生活のための食事ニーズと食品の好みを満たす十分で安全で栄養価の高い食料に、物理的、社会的かつ経済的に常時アクセスできる場合に存在する状況」(世界の食料安全保障と栄養の現状2021年報告)。
平たく言えば、いつでもだれでも質の高い食料を手に入れられる状態をめざすのが食料安保だと位置づけている。緊急時には限らない。注意深くFAOの定義を読むと、焦点を当てているのは供給ではなくて、一人ひとりが日常的に食料にアクセスする権利であることがわかる。
▽権利は満たされているのか
モノをそろえれば供給は解決する。だが、食料への権利を満たしているかは別問題だ。非常時に供給を十分に確保しても、お金がなくて買えなかったり、入手できる場所が遠すぎたりすれば、権利は満たされていないと考えられるからだ。
アフリカや南アジアなどで10億近い人たちが日常的な飢餓に直面している。そこでは食料供給が足りないだけではなく、必要とする側の貧困や女性差別、輸送手段の欠如などの要因が背景として絡み合っている。
遠い国の事例と片付けるわけにはいかない。最新の2019年の国民生活基礎調査(厚労省)によると、相対的貧困率は15・4%で、およそ7人に1人が該当している。貧しい食生活を強いられている家庭も多い。食料への権利をふだんから侵害されている状態が日本でも常在化している。
FAOなどの国際基準で言えば、日本人の少なからぬ人たちが食料安保を実現できていないことになる。
日本国内の農業団体や政治家などが食料安保を声高に主張するのは、国内農業振興のための支援や予算を確保する狙いがある。近年の国際需給の不安定さを考えると、国内で食料供給を準備することは間違いではない。
しかし、供給確保の面だけに主張がとどまっていては、説得力に欠ける。食料への権利を守る視点から国内供給の大切さを語り掛け、並行して経済的困窮者に対する日常的な食料支援にも力を入れることが必要だ。
FAOの定義はもちろん、日本国憲法第25条も次のように国民の生存権を規定している。
「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」。この権利には当然食生活も入る。食料への権利という視点を欠いたまま食料安保が議論されるべきではないだろう。
■山田 優(農業ジャーナリスト) 農学博士。さんの記事でした!
1955年生まれ。日本農業新聞記者出身で海外農業を担当してきた。著書に『亡国の密約』(共著、新潮社、2016年)、『農業問題の基層とは何か』(共著、ミネルヴァ書房、2014年)、『緊迫アジアの米――相次ぐ輸出規制』(筑波書房、2005年)などがある。
種苗法「改正」の問題点
田村貴昭議員に聞く
2020年11月7日(土)
一部を抜粋
農家からは、「自家増殖が禁止になって、種苗を毎年買うことになったら、もう営農はできない」という声が上がっています。
Amabaブログの(肥料不足・農地改革の手助け?)
波動0ヘルツ六崎太朗 さんのブログ記事からです!
米の自給ができんようになると、国力はあっという間に衰退する。農家は、防衛を考えるべき。
2022-08-23
肥料の高騰で、来年の米の作付けで採算が取れんようになる農家がかなり増えるらしい。
それでも輸入すれば、一時凌ぎにはなる。
しかし、その輸入も国際情勢に左右される。
食の生命線を外国に握られては、国力はあっという間に衰退する。
肥料高騰!ジャンボタニシ生息の田んぼなら、逆用することで雑草を肥料化。
2022年8月29日? 外来種活用の無機農法さんが配信
休耕地には、焼き畑農で、肥料代わり!