わざと難解にしている?「省令案」の文面

インボイス制度」のせいで「電気代値上げ・国民負担年58億円」!? 密かに進む政府の策謀とは

2023年2月27日(月)

 

幻冬舎さんの記事からです!

「インボイス制度」のせいで「電気代値上げ・国民負担年58億円」!? 密かに進む政府の策謀とは(幻冬舎ゴールドオンライン) - Yahoo!ニュース

 

資源エネルギー庁は2023年2月9日、再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案」をパブリックコメントにかけました。このなかで、インボイス制度に施行によって発生する電力会社の損失を電気料金値上げによって賄う旨の案が含まれています。インボイス制度により電力会社にどのような「損失」が発生するか、それがどのように電気料金の値上げにつながるか、問題点を解説します。

 

わざと難解にしている?「省令案」の文面

 

電気代の値上げにつながる「 再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案 」は、現在、 パブリックコメント にかけられています。

 

まずは、問題の改正案の文面をごらんください。

 

【施行規則改定案(13条の3の3 調整交付金の額の算定方法)】

 

「法第15条の3の規定に基づき算定して得た額から控除する額として、「消費税に係る仕入控除税額交付金に係る消費税相当額のうち、消費税法の規定により仕入れに係る消費税額として控除できる部分の金額をいう。))を新たに追加する。」

 

一読してきわめてわかりにくい表現ですが、この部分が、消費税のインボイス制度の施行により電力会社に生じる損失を、電気料金の値上げで賄うことにつながるものです。

 

どういうことか、解説します。

 

消費税インボイス制度の「仕入税額控除」とは

 

まず、問題の前提となるインボイス制度の「仕入税額控除」について解説します。

 

仕入税額控除」は、消費税の納税義務を負い、かつ年間売上高5,000万円以上の事業者に適用される消費税の納税方法です。「本則課税」といいます。

 

「商品・サービスを販売して得た売上に含まれる消費税相当額」から、仕入の際に支払った消費税相当額」を差し引いて、その額を納税するというものです。

 

大手電力会社の場合、売上高の規模からしてすべてがこの「仕入税額控除」を行っています。

 

インボイス制度」施行でなぜ「電気代値上げ」になるのか?

 

では、インボイス制度がなぜ電気代の値上がりにつながるのでしょうか。

 

太陽光発電等の再生可能エネルギーについては「FIT」(固定価格買取制度)の制度が設けられています。

 

これは、太陽光発電設備によって発電された余剰電力を電力会社があらかじめ決まった価格で買い取る制度です。

 

小規模な太陽光発電設備で余剰電力を電力会社に販売している「売電業者」の多くは、消費税の「免税事業者」です(なお、一部に誤解があるので付言しておくと、一般家庭による発電から生じた余剰電力の売却は消費税の課税対象となる「資産の譲渡」に該当しないのでそもそも消費税の対象外であり、「免税事業者」ですらありません)。

 

これまで、電力会社は、免税事業者から買い取った電力について、「仕入税額控除」を行ってきました。しかし、インボイス制度が施行されると、それができなくなります。

 

どういうことかというと、インボイス制度の下では、「仕入税額控除」を行うために、その資料として、仕入先から受け取ったインボイス(適格請求書)が必要となります。しかし、免税事業者は「インボイス」を発行することができません。その結果、電力会社はインボイスを受け取ることができず、「仕入税額控除」ができなくなってしまうということです。

 

今、検討されている制度は、電力会社(買取義務者)が仕入税額控除できない部分を、電気料金の一部である「再エネ賦課金」(再生可能エネルギー発電促進賦課金)に上乗せすることで賄うことです。

 

2023年2月18日の衆議院財務金融委員会における資源エネルギー庁長官の答弁によると、仕入税額控除できないことにより『やむをえず』発生する負担」の額を機械的に試算したところ、以下の通り、総額58億円とのことです。1kW/hあたり0.007円の値上げということになります。

 

・10kW/h未満の太陽光発電設備:15億円

 

・10kW/h以上の太陽光発電設備:39億円

 

・その他の再生エネルギー:4億円 「1kWあたりたった0.007円」と片付けることは簡単です。

 

しかし、総額58億円というのは決して少ない額ではありません。

 

また、インボイス登録の進捗がはかばかしくないこと、資源エネルギー庁の試算が機械的な試算にすぎないことを考慮すると、この金額は膨れ上がる可能性があります。

 

他の業種との間で公平性を欠く

 

さらに、もう一つ、税の公平性の観点からみても問題があります。

 

すなわち、インボイス制度が施行されると、電力会社だけでなく、他の業種でも同様の問題が生じます。

 

ところが、電力会社に対してのみこのような形での損失の補てんがなされるというのは、電力会社のみ特別扱いを認めるものであり、他の業種との関係で不公平といわざるをえません。

 

「益税」批判はナンセンス

 

最後に、補足として、インボイス制度を論じる際に再三問題となる「益税」の問題についても解説を加えておきます。

 

消費税の免税事業者制度について、消費税の負担を免れている「益税」だという指摘があります。

 

特に、FITの制度の下では、免税事業者は電力会社から「消費税相当額」を受け取ってきていたのであり、「益税」にほかならないという考え方に陥りがちです。

 

しかし、このような考え方は誤解、あるいは消費税法に関する無知・無理解に基づくものといわざるを得ません。この点について、改めて解説を加えておきます。

 

ひろゆき氏、ホリエモン氏、高橋洋一氏あたりはまだしも、残念なことに、一定程度の理性と見識を持ち合わせているとみられてきた論者でさえ、誤解または税法に関する無理解からか、この「益税叩き」に与していることがあります。

 

しかし、そもそも免税事業者の制度がおかれている趣旨は、売上額が少ないのに納税事務のための余計な手間と費用を負担させるのは酷だということにあります。

 

しかも、「益税」というならば、課税事業者の側でも、「仕入税額控除」「簡易課税制度」の下、「益税」とよばれる事態は不可避的に発生せざるを得ません。なぜなら、消費税法上、価格に消費税相当額を上乗せするかどうかは、事業者が「自己責任によって判断させられているにすぎない」からです。

 

このことからすれば、免税事業者の「益税」をいうこと自体、そもそも所得税課税最低限」や「住民税の非課税」といった制度がけしからんと難癖をつけているに等しく、ナンセンスです。

 

とりわけ、FITにおける売電業者のなかには、余剰電力の売上がせいぜい月数万円というケースも多く、なおさら上記趣旨があてはまります。

 

また、以下は「なお念のため」というにすぎませんが、仮に「益税」という概念が認められたとしても、現状、多くの自営業・フリーランスが、取引先との力関係の格差ゆえに、実質的に消費税相当額を価格に転嫁できていないという実態があります。

 

この「益税叩き」の理不尽性については詳しくは2023年1月18日の記事「 『どうするインボイス制度』事業主の8割が総スカンで制度崩壊の足音迫る!? 」をご覧ください。

 

再生可能エネルギー電気の利用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案」の パブリックコメント の受付期間は3月10日(金)いっぱいまでです。

 

GGO編集部さんの記事でした!

 

 

 

 

記事内にも出てきましたが消費税法上、価格に消費税相当額を上乗せするかどうかは、事業者が「自己責任によって判断させられているにすぎない」からです。』

 

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