科学者を驚かせたこの生物の正体は?
2022年2/20(日)
──ニュージーランド南島東部沿岸で、独特の姿形からギリシャ神話に登場する架空の生物「キメラ」の属名を持つ魚の赤ちゃんが発見された
2月15日に、国立水大気研究所(NIWA)の科学者が南島沖のチャタム海嶺付近を調査していた際にゴースト・シャークの赤ちゃんが捕獲された。NIWAのウェブサイトによると、この深海ザメは「チャタム海嶺の水深約1200メートルで孵化したばかりの新生児」であるという。
ゴースト・シャークはキメラとも呼ばれ、実際にはサメではなく、サメやエイの軟骨の近縁種である。NIWAによると、ゴースト・シャークは深海で生活しているため、めったに発見されず幼魚の目撃例はさらにまれである。
NIWAによると、彼らの胚は「海底に敷かれた卵カプセルの中で成長し、孵化の準備が整うまで卵黄を食べ続ける」のだという。
この発見をしたチームの一員であるNIWAの科学者、ブリット・フィヌッチ氏は、「非常にレアでエキサイティングな発見だ」と述べている。
「深海生物は一般に見つけにくく、特にゴースト・シャークはなかなかお目にかかれる深海魚ではないため研究も進めにくく。非常に謎めいています」とBBCに語った。
「このゴースト・シャークは、卵の黄身でお腹がいっぱいになっているので、最近孵化したことが分かります。かなり驚かされます。深海に生息するゴースト・シャークのほとんどは成体で、新生児はあまり報告されていないため、彼らについてほとんど何もわかっていない」と、フィヌッチ博士はNIWAの声明で述べている。
■ ベールに包まれた謎の深海魚
また、若いゴースト・シャークは成体とは全く異なる特徴を示すという。
「よりよく研究されているキメラの仲間から、幼魚と成魚では食事や生息地の条件が異なることが分かっています。また、幼魚は成魚とは異なり、独特の色彩パターンを持っています。発見は、この謎めいた深海魚の生物学と生態をより深く理解するのに役立つでしょう」
このサメの正確な種を特定するためには、さらなる検査と遺伝子分析が必要であると彼女は指摘している。
キメラは「ラット・フィッシュ」とも呼ばれ、数百万年前から生息している。国際自然保護連合の一部門であるサメ専門家グループの科学者たちは最近、ゴースト・シャーク種の16%が 絶滅危惧または絶滅寸前であると発表した。
2020年12月に『Fish and Fisheries』誌に発表されたこの評価では、ゴースト・シャーク種の15パーセントが「研究が不十分で、絶滅のリスクを判断できない」とも述べられている。