多くの人が利用している「変動型」の住宅ローンは基本的に上がりません。

“一枚上手”だった日銀 今後の金融緩和は? 住宅ローンは? 政策修正めぐる5つの「Q」

2022年12月25日(日)

news.yahoo.co.jp

 

 日銀の突然の金融緩和政策の修正が波紋を広げています。10年物国債金利許容変動幅をプラスマイナス0.25%から同0.5%に拡大するとした今回の決定は「突然」でした。なぜ突然だったのか。なぜ黒田総裁利上げではないと強調するのか。住宅ローンなどへの影響はどうなるのか。第一生命経済研究所藤代宏一主任エコノミストに寄稿してもらいました。

 

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12月20日日銀は予想外にYCC(イールドカーブコントロール)の修正に踏み切りました。その背景を整理したうえで今後の金融政策を予想します。また事実上の利上げが住宅ローン金利に与える影響についても考えてみたいと思います。

 

Q1:政策修正はどんな内容だった?

 

 今回の決定はあくまでYCCの「修正」であり、政策金利の誘導目標そのものを「変更」するものではありませんでした。短期金利は▲0.1%、長期金利は0%程度のまま据え置きです。今回、修正が加えられたのは10年金利の「変動幅」で、従来の±0.25%とされていたものが今回±0.50%へと拡大されました。念のため解説しておくと、日銀が定める10年金利の誘導目標は「0%程度」、その「程度」の定義が今回「±0.50%」に変更されたという具合です。

 

 政策修正の狙いの一つに、市場機能の復活があります。2022年に入った後、世界的に長期金利が上昇していたのをよそに、日本の10年金利は日銀が上限と定める0.25%で頭打ち感となっており、本来の意味での“金融市場”から隔離された状態になっていました。通常、

長期金利はその国の体温(≒経済・物価動向)を示しますが、そうした機能が著しく損なわれているとの指摘は多くあり、日銀自身もそれを自覚していたことから、長期金利の変動幅拡大に踏み切ったとみられます。

 

Q2:黒田総裁はなぜ「利上げでない」と強調?

 

 長期金利の変動幅拡大は事実上の利上げに相当しますが、黒田総裁は記者会見で「利上げではない。金融引き締めではまったくない」と繰り返しました。換言すると、「事実上の利上げはしたけれども、それによって緩和的な金融政策が長く続けられるようになるのだから、そう考えれば金融引き締めではない、むしろ緩和的だ」という説明です。

 

 こうした情報発信の仕方から判断すると、今後、日銀がマイナス金利の撤回を含めた金融引き締め方向への政策変更に踏み切る際、こうした巧みな説明で過去の発言と整合性を確保していくのでしょう。

 

Q3:政策修正はなぜ突然決まった?

 

 今回の決定はその唐突感が話題となりました。予想を外した専門家は「市場との対話を軽視している」あるいは「唐突な金融政策変更は中央銀行としての信頼を損ねる」などと酷評しますが、筆者が思うに今回は日銀の作戦勝ちです。というのも、YCCの修正は「いきなり感」が不可欠だからです。事前に利上げ観測(政策の修正観測)が広がってしまうとオペに売りが殺到してしまい、かえって混乱を招いてしまうという事情があるためです。

 

 もし、仮に今回の政策修正が1カ月前に予測可能な状態になっていたとしたら、国債保有する投資家は可能な限り多くの国債を0.25%の利回り(≒高い債券価格)で日銀に売却したはずであり、オペが持続不可能になっていた可能性があります。黒田総裁の任期中に政策変更はないだろう」というある種の油断がまん延していたこのタイミングを逃さなかった日銀が一枚上手だったと筆者は思います。

 

Q4:日銀は今後「出口戦略」に舵を切る?

 

 筆者は2023年の賃金・物価動向が、日銀の政策転換を促す方向に動くとみており、その点で企業の価格設定スタンスに注目しています。特に注目すべきは中小企業・非製造業の販売価格判断DIで、現在はバブル時の頂点に比肩する勢いで上昇し、値上げの裾野拡大を印象付ける領域に達しています。

 

 これまで企業はコストプッシュ型のインフレに直面した際に十分な価格転嫁ができず、結果的にそれは賃金の下押し要因になってきました。しかし、深刻な人手不足と投入物価の上昇に直面する企業は、最後まで値上げを我慢してシェアを守ろうとする消耗戦に距離を置き始めたようにみえます。2023年もこうした賃金上昇を伴った物価上昇が観察されるようだと、日銀は出口戦略に舵を切る可能性が高まるでしょう。

 

Q5:住宅ローンへの影響はどうなる?

 

 なお最後に生活への影響ですが、気になるのは住宅ローンでしょう。結論を先取りすると、既に住宅ローンを組んでいるほとんどの人にとって、今回の政策修正による直接的な影響は限定的だと思います(「直接的な」としたのは、金融環境の変化を受け、各行の個別戦略で金利の優遇幅を調整するケースが考えられるからです)。

 

 というもの、今回の(事実上の)長期金利の引き上げによって上がるのは新規に組む「固定型住宅ローンの金利」に限定されるからです。多くの人が利用している「変動型」の住宅ローンは基本的に上がりません。なぜなら変動型の住宅ローン金利は、日銀が定める短期金利(現在はマイナス0.1%、今回変更なし)に連動するからです。

 

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※本資料は情報提供を目的として作成されたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。作成時点で、第一生命経済研究所経済調査部が信ずるに足ると判断した情報に基づき作成していますが、その正確性、完全性に対する責任は負いません。見通しは予告なく変更されることがあります。また、記載された内容は、第一生命ないしはその関連会社の投資方針と常に整合的であるとは限りません。

 

 

 

 

 

直接税の消費税を、政府・政権が間接税のふりをして、強引に取っている(企業を儲けさせるため?Or献金を要求?!)

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