伝統的な登山客たちとは全く別の人種が入ってきたとは思う

「どなたですか?」不法侵入に山小屋経営者も困惑…夏の登山でトラブル続出 “マナー違反”の実態

2023年07月23日(日) ABEMA TIMESさんの記事です!

「どなたですか?」不法侵入に山小屋経営者も困惑…夏の登山でトラブル続出 “マナー違反”の実態(ABEMA TIMES) - Yahoo!ニュース

 

 多くの人が登山を楽しむ夏シーズン。一方で、登山時のトラブルも相次いでいる。

 

 17日、富士山では登山中の5歳児が体調不良を訴え嘔吐。救急要請があり病院に搬送された。同日は60代の男性が下山中に転倒し、亡くなる事故も発生した。

 

 

キャンパーもどき"の非常識行動に批判殺到 登山道でたき火&ゴミ ... encount.press

 

 登山客の“マナー違反”も増加している。中には男性が登山道で焚火を行っていたケースもあり、火の不始末があれば山火事にもなりかねない危険な行為だ。

 

北陸地方・白山の甚之助避難小屋では登山客がトイレにビニールやカップ麺の容器など1キロにおよぶゴミを流したために排水溝が詰まり、去年9月から使用禁止になった。現在も全面的な復旧には至っていない。

 

 また、長野県・飯縄山の携帯トイレ使用ブースでは、糞尿の入った袋が放置され、時には排泄物が床に散らばっているという。現地では2人の常連登山者がボランティアで掃除や修繕を続けているが、目に余る登山客の行動は後を絶たない。

 

■知らない人がなぜ? 山小屋経営者「どなたですか」“不法侵入”トラブルも

 

 北アルプスで山小屋「三俣山荘」を経営、登山道の整備や景観保護にも尽力している伊藤圭さんも「残念な出来事があった」と話す。ニュース番組「ABEMA Prime」に出演した伊藤さんは「ゴールデンウィーク中、バックカントリースキーで自分の山小屋の視察に行った」という。

 

「身内のスタッフと仲間と一緒に、2チームに分かれて行った。頑張ってたどり着いて山荘に到着して2階を見上げたら、ドアが開いていた。もう1チームが先に着いたのかなと思って『早く着いたね、お疲れさま』と言ったら全然知らない人が出てきて『お疲れ様です』と言われた。『どなたですか?』と聞くと『ここ泊まれるって聞いたから泊っているんだよね』と言われた」

 

 詳しく聞くと、2月あたりから山小屋の裏口が事故で開いていたという。

 

「発見した人が泊まり始めて、脈々と口伝えで『あの小屋、泊れるらしいよ』みたいになったらしい。10組ぐらいは泊っていたのかなという形跡があった。中にいた人には『自分はここの経営者だ。こういうことはやめてください』と言って、退去してもらった」

 

 山小屋は伊藤さんが好意で貸していたわけではなく、不法侵入に当たるという。

 

 

山小屋「三俣山荘」で起きたこと

 

「三俣山荘は国立公園内なので、林野庁に借地料を払って経営している。厳冬期に山小屋の扉が開くと、ものすごい猛吹雪なので、どこからでも雪が入ってくるし、動物も避難してくる。厳冬期でマイナス20度ぐらいになると、本当に生命の危険がある。そういう時は命が大切なので、緊急避難されてもしょうがない。これは、山小屋の伝統としてある。ただ今回は『山小屋を使ったほうが楽だから』といった理由だ。マナーとして間違っている。せめて扉は閉めて帰ってほしかった」

 

 子どもの頃から山小屋に慣れ親しみ、約40年、現場を見てきたという伊藤さん。その上で「全体のマナーは下がっているとは思わない」と見解を述べる。

 

「昔はゴミを持ち帰ることがマナーとして全くなかった。混んでいるシーズンに山小屋が満員になると、入口がゴミだらけで、登山道上に捨てていく人も多かった。だんだん『ゴミは持ち帰るもの』と常識になってきて、一概にマナーが下がっているとは感じない。ただ、伝統的な登山客たちとは全く別の人種が入ってきたとは思う。その人たちは伝統を知らないから『楽しいからやろうぜ』といった行動が、実は山ではタブーだということがある」

 

■登山歴40年以上のプロ「臆病さを持って」啓蒙の必要性

 

 日本山岳ガイド協会に認定された山岳ガイドで、日本山岳レスキュー協会にも所属している加藤智二さんも「安易に山小屋に不法侵入する人たちは、基本を知らない」と話す。

 

「冬山を登る人は、本来は本当に自分で何でもやるつもりで入るべきだ。雪道の知識や技術を持つ必要がある。人間の生存を脅かす場所に行くのだから、装備、食料、燃料、全部自分で背負って担いで、荷物は30キロぐらいになる。登山の文化・技術を教わってから、自分で実践、失敗して『もっとこうしなきゃいけない』と積み重ねて、もっと用心深く冒険していくべき」

 

 登山歴40年以上、8000メートル級のヒマラヤ登山も経験してきた加藤さん。登山客のマナーについて「個人を糾弾するのではなく、啓蒙して伝わるようにしていく必要がある」と話す。

 

「昔は大学の山岳会や社会人山岳会などで先輩から怒られたり叱られたりして学んできたものが、今はそのプロセスがない。“土台”が全く空っぽの状態で、SNSを見ていきなり『みんなが行っているから行こう』と言って、ポンと行く。行った様子をネットにあげて、自分を出すような時代だ。頭ごなしに言っても伝わらない場合、やっぱり啓蒙して、ちゃんと伝わるようにしていかないといけないと思う」

 

 その上で、これから登山を考えている人に加藤さんは「臆病さを持ってほしい」と呼びかける。

 

「山は老若男女、登山の技術があるなしに関わらず、忖度しない。天候もだ。臆病さが足りない。私の知り合いや先輩たちも含めて、凍傷で手足や指を切っていない、生き残っている人たちはかなり慎重派だ。30年前は今のレジャーのような楽しい感じとは雰囲気が違った。山は機嫌のいい時に遊ばせてもらう場所であって、機嫌の悪い時は用心深く帰る。それの繰り返しだ」

 

 また、登山では「行けるところまで行く」ではなく、戻る体力や食料を残しておくことが重要だという。

 

 

「心肺能力的には下りるほうが楽だが、肉体的には疲労や衝撃力がかかる。筋肉もダメージも多く、事故が起きやすい。判断ミスを起こさないためにも、下る時にこそ、糖質を補給して、脳みそや筋肉に栄養を回さないといけない。高齢になると、動的バランス力も劣ってくる。慎重な判断が必要だ」

(「ABEMA Prime」より)

 

 

 

『判断ミスを起こさないためにも、下る時にこそ、糖質を補給して、脳みそや筋肉に栄養を回さないといけない。高齢になると、動的バランス力も劣ってくる。慎重な判断が必要だ』