2000年代に小泉純一郎首相(当時)が「聖域なき構造改革」

全国に蔓延する「刑務所の食事よりひどい給食」の実態 エビフライはゼロになり、急増したのは切り干し大根…

2023年09月22日(金)AERA dot.さんの記事です!

全国に蔓延する「刑務所の食事よりひどい給食」の実態 エビフライはゼロになり、急増したのは切り干し大根…(AERA dot.) - Yahoo!ニュース

 

 全国で給食調理業務を請け負ってきた「ホーユー」が夏休み明けに突然、給食の提供を停止した問題では、学校関係者や保護者から怒りや不安の声が上がった。『学校給食 食育の期待と食のはざまで』(岩波書店)の著者で、「学校給食ニュース」の編集責任者でもある牧下圭貴(けいき)さんは「学校給食を『たかが子どもの昼飯』ととらえる自治体や地方議会が多い。それがこの問題の根底にある」と指摘する。

 

 ホーユーは小中学校の給食から高校、大学の学生食堂まで幅広くサービスを提供していたが、今回の給食停止によって最も大きな影響を受けたのは、障害のある児童生徒が通う特別支援学校だろう。

 

 牧下さんは言う。

 

「特別支援学校の給食を作るのはものすごく手間がかかるんです。例えば、よくかめない子どもがいるので、食材を適切な大きさに切らなければならないとか、管理食を作る必要があるとか。それができる人材をかなり多く投入しなければならない。そんな給食が1日でも止まってしまうと、非常に困った事態となる」

 

 ホーユーは多くの人員を必要とする特別支援学校の給食を委託している比率が同業者よりも高かった。人件費が高騰するなか、「事業者としては結構大変だったのでしょう」と牧下さんは推察する。

 

 帝国データバンクによると、ホーユーは、同業者との競合による受注価格の低下、コロナ禍で受託先の学校や官公庁などの食堂運営が休止、食材費や人件費の高止まりなどが原因となり収益が圧迫され、今回の事態に陥ったという。負債は、2022年11月期末時点で約16億7000万円。

 

 ホーユーは全国で給食調理業務を展開していたため、給食停止の影響が広がったが、地域の給食調理委託業者が事業を停止したり、破綻するケースは珍しくないという。

 

 牧下さんは「学校給食調理の民間委託が増え始めた1990年代から業者の破綻は問題視されてきました。今後、破綻はさらに増えるでしょう」と指摘する。

 

 というのも、低価格落札が当たり前の給食調理委託は食材費や人件費の上がらない「デフレ」だからこそ成り立ってきたビジネスモデルだからだ。

 

 帝国データバンクの調査によると、22年度、給食事業者374社のうち127社、34.0%が赤字で、減益は29.1%だった。合わせて63.1%の企業業績が悪化している。

 

「今回の問題は、学校給食調理の合理化を強力に推し進めてきた政府と財政難にあえぐ地方自治体がコスト削減を最優先にしてきた結果だと思います。学校給食を単なる食事ととらえ、学校給食法や食育基本法の理念にある教育として、あるいは生きた教材として給食を積極的に活用することを忘れてしまったことが背景にあります」

 

■「質素すぎる給食」問題

 

かつて、多くの自治体は調理員を直接雇用し、給食を学校で調理して提供する「直営自校調理方式」を採用してきた。

 

 ところが、2000年代に小泉純一郎首相(当時)が「聖域なき構造改革」を掲げて以降、学校給食調理の民営委託化が急速に進んだ。

 

 総務省によると、現在、政令指定都市における学校給食調理の委託率は100%(21年4月1日)。市町村では69.7%である。

 

 一方、学校給食の調理委託は食材の高騰と相まって、極端に質素な給食が出される一因にもなっている。

 

 学校給食の給食の食材費は保護者が負担することが学校給食法によって定められている。

 

 7月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除く)は前年同月比3.3%上昇。特に「生鮮食品を除く食料」は9.2%も上昇しており、約1年前から高止まりの状態が続いている。

 

「ところが、給食費は保護者負担が増えるので、上げづらいんですよ。さらに、生活保護世帯に教育扶助として給食費が支給される場合だと、自治体の負担が増えるので、自治体も値上げしたくない。そうすると、給食費を上げたいのは給食の献立をつくる栄養士だけ、ということがある。ただ、献立の工夫も限界がきていると思います」

 

 これまでも食材高騰の影響で給食の内容が極端に質素となることがたびたび起こってきた。

 

 19年、食材価格の高騰を理由に副食(おかず)を見直した名古屋市の給食に対して「刑務所の食事よりひどいことになってないか」「戦中戦後じゃあるまいし…次代を担う子供たちに給食の楽しみも与えてやれないのが今の日本なのか」などと、SNSで炎上した。

 

 発端となったのは東海テレビ「“切干大根”など急増…児童『肉食べたい』食材高騰で質素に」という調査報道。番組の中で10年前のメニューと比較すると、年6回あったヒレカツが1回に、6回あったエビフライはゼロに。デザートは年83回から41回に半減。一方で、単価の安い切り干し大根は5回から14回に、高野豆腐は2回から17回に急増していた。

 

 これに対して名古屋市教育委員会の担当者は「ほんとに11年間(給食費を値上げせずに)なんとかやりくりをして頑張ってきたのですが、ここ数年食材費が高騰していますので、さすがに限界に近づいてきたというところでございます。栄養は確保しないといけないということで、安くて栄養価がある食材を使うことが増えています」とコメント。

 

 市教会は20年度から給食費を月額600円値上げし、4400円にした。

 

 また、18年には仙台市の給食が5年以上にわたって学校給食摂取基準が定めるカロリーや栄養素を満たしていないことが発覚した。市によると米やパン、牛乳の価格が値上がりし、おかずにまわせる金額が減ったことが原因だという。

 

 最近では今年6月、大阪府四條畷市(しじょうなわてし)の市民が市に対して「私の子どもが中学校に通っていますが、給食の量がすごく少ないみたいです。(同級生も同じ意見が多い)(中略)一度、市長が抜き打ちで中学校の給食を食べていただき、子どもたちに適量か判断していただけたらさいわいです」との提言がなされるなど、給食の質や量の低下を訴える声が全国各地で途切れることはない。

 

■切磋琢磨がなくなった

 

 ただ、前出の牧下さんによると、食材の高騰が「質素すぎる給食」に直結するわけではないという。

 

『給食』といっても、やはり料理ですから、それをつくる栄養士と調理員のスキルに左右されるところが大きいわけです。限られた予算でもうまく工夫することによって、ぱっと見、これまでとそれほど変わらないレベルのものを出せたりする。でも、献立の工夫が苦手な栄養士やスキルの低い調理チームだと、栄養は足りているけれど、見た目が寂しい給食になってしまう」

 

 調理員が委託業者になってしまい、学校や自治体の栄養士と切磋琢磨してレシピを工夫する機会が失われてしまったことも大きな要因という。

 

 給食の質を問わない低価格落札がまん延し、業者の経営破綻や極端に質素な給食が後を絶たない。そのしわ寄せを受けてきたのは子どもたちなのである。

AERA dot.編集部・米倉昭仁)さんの記事でした!

 

 

 

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