「後年度影響試算」は、負債の一部である「支出」しか算出していないので、財務分析には不適当

「負債」しか考慮しない財務省、筆者がいた30年前から進歩なし 「後年度影響試算」は財務分析に不適当

2024年04月12日(金)  zakzak by 夕刊フジ 高橋洋一さんの記事です!

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財務省は、長期金利が現行試算の前提である2・1%よりさらに1%上昇し、名目成長率の想定(3%)を超える金利水準となった場合、国債の利払い費が従来見込みより8000億円も増えるという試算を財政制度等審議会財務相の諮問機関)の分科会に示した。この試算は何を意味するのか。

財務省の資料は、毎年の予算審議に合わせてまとめる「後年度影響試算」だ。従来試算では2025年度の利払い費は金利2・1%で11兆1000億円だったが、金利が3・1%だと11兆9000億円となる。

分科会後に記者会見した増田寛也会長代理は金利の上昇による利払い費の増加が、財政の悪化につながるということが共有された」と述べたという。

一般論として、金利の変化によって財務状況がどのように変化するかを把握することは極めて重要で、「金利変動リスク」などと呼ばれている。これを定量的に把握するために、金融機関などは「ALM(資産・負債の総合管理)」と呼ばれる財務経営管理手法を導入している。

これは国の財務管理にとっても同じだ。財務省も、財政投融資リポートという公式書類の中で、ALMを「資産(Asset)及び負債(Liability)の総合管理」として、「金融機関などにおいて財務の健全性を確保するために行われている経営管理手法の一つ」と説明。「財投特会(財政投融資特別会計)の財務の健全性確保」というタイトルで、ALMを導入していることが書かれている。

実は、これは筆者が30年ほど前の旧大蔵省の官僚時代に導入したものだ。ざっくりいえば、財政投融資資金のバランスシート(貸借対照表)を作って、金利変化があったときに資産と負債がどのように変化するかを定量的に把握して、財務の健全性を確保するものだ。

その分析の中には、当然のこととして、負債サイドの支出の変化も含まれている。もっとも資産サイドの収入があれば、財務の変化はたいしたことがないともいえる。

 

30年ほど前、筆者は、精緻なALMは国の一部である財投特会のみに適用したが、そのためには国全体や統合政府のバランスシートも必要だったので、それらを作成した。ついでに簡易なALM手法で、国全体や統合政府の金利変動リスクも算出した。その際、「後年度影響試算」は、負債の一部である「支出」しか算出していないので、財務分析には不適当だと言ったはずだ。

現在の筆者に詳しいデータはないが、現時点の統合政府で見れば若干の「純資産超過」であることを考慮すると、金利上昇があっても、財務状況は好転もしくは横ばいではないだろうか。

いずれにしても、今の財務省は相変わらず負債しか考えられず、30年前から進歩がないのには驚くばかりだ。

こんな誤った考え方を財政審委員で共有したら、間違った財政政策になってしまう。国全体や統合政府でのALMを一刻も早く導入すべきだ。 

(元内閣参事官・嘉悦大教授・高橋洋一)さんの記事でした。

 

 

 

令和2年度「連結財務書類」の概要 : 財務省さんからお借りしました。

 

 

 

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