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【ニュースの核心】中露艦隊が列島一周…なめられた岸田政権 選挙運動などしている場合か? 核「持ち込ませず」はフィクション、領海法改正含めた対応を

2021.10.30

 

 

 中国海軍とロシア海軍の艦艇計10隻が17日から23日にかけて、日本列島をぐるりと一周するように、日本海から青森県と北海道を隔てる津軽海峡を抜け、その後、日本列島に沿うように太平洋を南下し、鹿児島県の大隅海峡を通過した。初めての事態である。
 ところが、岸田文雄政権の動きは、まったく鈍い。政権の命運がかかった衆院選(31日投開票)の最中とはいえ、選挙運動などしている場合か。
 これは「国家の危機」だ。直ちに国家安全保障会議(NSC)を開いて、対応策を協議すべきだ。
 中国はミサイル駆逐艦、ロシアは駆逐艦などが艦隊を組んだ。伊豆諸島付近では、中露の艦艇がそれぞれヘリコプターを発艦させた。長崎県沖では、中国艦艇のヘリコプターが発着艦する場面もあった。
 ロシアは「中国海軍との合同パトロール」などと言っているが、明らかに軍事訓練の一環である。にもかかわらず、岸田首相は27日、やっと都内での応援演説で、中露の動きを受けて、「皆さんの命、日本の平和や生活を守るため、しっかりとした外交・安全保障を進めなければならない」と語った。磯崎仁彦官房副長官は「高い関心を持って注視している。警戒監視活動に万全を期す」などと言うにとどまっている。
 日本列島が中露艦隊に包囲されたも同然で、「パトロール」までされたというのに、何という鈍さなのか。
 相手は、発足したばかりの岸田政権の「度胸」を試している。これでは「岸田首相は大したことない。次は、潜水艦を交えて、海峡で合同軍事訓練でもやるか」と思ったとしても不思議ではない。

 

 なぜ、こんな事態になったかと言えば、日本が領海法で両海峡を含めた5海峡について「領海は3カイリ(約5・5キロ)まで」とし、中間を公海扱いにしているからだ。本来、国際法が認めている12カイリ(約22キロ)よりも狭く設定しているのだ。
 なぜかと言えば、核を積んだ米国の原子力潜水艦がこれらの海峡を通過すると、12カイリだと「日本の領海に侵入した」かたちになってしまう。非核3原則の「核を持ち込ませず」を守るためには、「公海部分を残した方がいい」という判断があったからだ。
 だが、3原則の「持たず、作らず」はともかく、「持ち込ませず」はフィクションである。米国の原潜や空母が、わざわざ核兵器を降ろして日本に来るわけがない。
 12カイリに改めても、公海に面した海峡は、軍艦を含む外国艦船に通過通航権が認められる。そうだとしても、日本の領海にすれば、他国の軍艦が領海内で軍事演習をするのは「挑発も極まれり」で、論外になるだろう。
 岸田首相は領海法改正を含めて、直ちに抜本的対応を検討すべきだ。相手は選挙前だからこそ、挑発している。
 それなのに、政権のスポークスマンが「引き続き警戒する」などとお茶を濁しているようでは、話にならない。
 国民は不安を感じている。多くの有権者は「応援してもらいたいなら、政権はやるべき仕事をしっかりやれ!」と思っているはずだ。

 

 ■長谷川幸洋(はせがわ・ゆきひろ) ジャーナリスト。1953年、千葉県生まれ。慶大経済卒、ジョンズホプキンス大学大学院(SAIS)修了。政治や経済、外交・安全保障の問題について、独自情報に基づく解説に定評がある。政府の規制改革会議委員などの公職も務めた。著書『日本国の正体 政治家・官僚・メディア-本当の権力者は誰か』(講談社)で山本七平賞受賞。ユーチューブで「長谷川幸洋高橋洋一のNEWSチャンネル」配信中。