聖書かリンゴか1ドル紙幣か? 政治家を笑い飛ばすジョークを1つ教えます
2019年11月15日(金)
https://www.newsweekjapan.jp/hayasaka/2019/11/11.php
<世界のジョーク界において「主役」の座にあるのが政治家。世界各地でジョークを収集してきたノンフィクション作家、早坂隆氏によるジョーク・コラム第1回>
【息子の将来】
父親が息子の将来について悩んでいた。
ある日、父親は一計を案じた。息子の部屋の机の上に、聖書とリンゴと1ドル紙幣を置いておいたのである。息子が聖書を取れば牧師にし、リンゴを取れば農民にし、1ドル紙幣を取れば実業家にしようと考えたのであった。
しばらくして、父親は息子の部屋のドアを開けた。すると息子は聖書に腰掛けながら、リンゴをかじっていた。父親は息子に聞いた。
「1ドル紙幣はどうした?」
息子は答えた。
「知らないよ」
結局、息子は後に政治家になった。
◇ ◇ ◇
小生、世界各地を取材で巡るたび、その国の「ジョーク」を集めることを楽しみの1つとしてきた。バーなどで「君の国のジョークを教えてくれ」と頼めば、みな喜んで指南してくれるものである。
そんな世界のジョーク界において、どの国でも「主役」の座にあるのが政治家の皆様。政治家とは「笑い飛ばされる」運命にある。
なるほど、世界の主だった指導者を並べてみれば、アメリカのドナルド・トランプ、中国の習近平(シ ー・チンピン)、ロシアのウラジーミル・プーチン、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)と、まさに天下御免の百鬼夜行。いずれも聖書に腰掛けてリンゴをかじり、1ドル紙幣を着服しそうな元「悪童」ばかりではないか。
それにしても、よくもこれだけ癖の強い個性派が揃(そろ)ったものだと感心するやら呆(あき)れるやら。この面々が21世紀を生きるわれわれの代表者であることを鑑みれば、人類の進化がいかに道半ばであるかも明瞭となろう。
われらが国会、学級崩壊
現世もいまだ中世。かかる戦国絵巻において、わが国は達者に生き延びることができるのであろうか。国民が不安に思うのも無理はない。
にもかかわらず、われらが国会に目を転じてみれば、そんな危機感など何処(どこ)吹く風。熾烈な選挙戦を勝ち抜いて選ばれたはずの優秀な先生方が、下品なヤジやら、子供じみた足の引っ張り合いやら、ヒステリックな罵声やら、居眠りやら、対案なき反対やら、自家撞着やら、テレビ中継を意識したパフォーマンスやらで、もはや駄々乱れ飛ぶ学級崩壊、あるいは骨抜き民主主義の成れの果て。憂国の為政家もいるのだろうが、どうにも安普請の御仁ばかりが目立つのは、彼ら彼女らの強烈な持ち味のなせる業なのか、それとも単なる数の多寡の問題か。
離合集散を繰り返す野党の党名を正確に言える国民など、もはや奇特な少数派であろう。不人気の食堂がいくら看板を掛け替えたり、共同で新店舗を出そうとしても、店主や従業員の顔ぶれも同じ、味付けもさして変わっていないのであれば、不味(まず)いものは不味いままである。
かといって、与党のメニューを「絶品」と思っている人も決して多くないわけで。
永田町にも、聖書とリンゴと1ドル紙幣を置いて、観察してみたいものである。