「あなたはいったい何者なの?」“人魚のミイラ” 横浜へ行く X線CT検査で新事実も 謎に満ちた正体解明まであと一息
2022年12月25日(日)
岡山県浅口市鴨方町の寺で、長年「人魚のミイラ」として所蔵されてきたものを、「科学的・民俗学的な面からアプローチし解き明かそう」というプロジェクトが進んでいます。
プロジェクト開始から10か月以上が経ちますが、調べれば調べるほど謎が深まっていくその正体。この秋には、最先端の機械を使った、精密な調査も行われました。
■上半身は猿、下半身は魚?謎深まる
「人魚のミイラ」
ガムテープをはがしダンボールの中から出てきたのは、年季の入ったトランクバッグです。
(倉敷芸術科学大学 加藤敬史教授) 「マトリョーシカみたいに、箱の中に箱が入っているんですけど」 その木箱の中に入っていたのは…
(加藤教授) 「何事もなく無事です」
下半身は “ウロコのある魚” のようですが、上半身は “猿” のような姿。。。「人魚のミイラ」です。
体長30センチほどの「ミイラ」がこの日運び込まれたのは、世界でも限られた数しかない、最新鋭の「X線CT検査装置」です。
(倉敷芸術科学大学 加藤敬史教授) 「より細かい撮影をして、人魚の細かい部分を観察して、これによってグンと研究は進むと」
■寺に保管されていた「人魚のミイラ」その正体に迫る
「人魚のミイラ」は、いまから300年近く前、江戸時代の元文年間のものと言われていて、寺には、明治の終わりから昭和の初めごろに伝わったとされています。
(円珠院 柆田宏善住職)
「古文書に書いているが、今の高知県=土佐の沖で漁師の網に引っかかった」
この人魚のミイラを、「生物学・民俗学の専門家らが多角的に分析しよう」というプロジェクトが立ち上がりました。
(倉敷芸術科学大学 加藤敬史教授)
「我々は『これが何者であるか』ということを知りたい。科学的な好奇心がとても大きい」
■人魚のミイラをCTスキャン 科学の力で次々に「新事実」が
科学的な好奇心からミイラが運び込まれたのは、大学付属の動物病院にあるCT室です。
もちろん人魚の撮影は初めてです。
(倉敷芸術科学大学 武光浩史准教授)
「獣医の、特に教員の間では『どれだけ変わった動物を撮るか』が割と自慢のネタになったりするので、テンション上がりますよね」
それから2か月後、プロジェクトチームは中間報告を発表。驚くべき事実が分かりました。
(倉敷芸術科学大学 加藤敬史教授)
「肩から上、頭部は…ほ乳類。特に霊長類、サルのような外見をしているが、歯は、ほ乳類の歯とは似ていませんでした」
(倉敷芸術科学大学 加藤敬史教授)
「円錐形の歯ですね。ちょっと内側に曲がっているんですけども、円錐形の同じ形の歯がずっと並んでいます。近い生物だと『は虫類』や『肉食性の魚類』がこういう歯を持っている」
ほ乳類?魚類?それとも…さらに、腕や肩などにも「ウロコ」が隠れていることがわかりました。
(倉敷芸術科学大学 加藤敬史教授)
「胴体部分と上半身部分では『異なる形状のウロコ』がある」
この画像では(画像参照)、「青色の矢印」=胴体部分のウロコが丸みを帯びているのに対し、「黄色の矢印」=腕部分のウロコはまきびし状です。