東京―名古屋間の1号沿いで、約2キロごとにあった

昭和のドライブイン、「1周回って新しい」とSNSで話題…「こんな日来るとは」店員も驚く

2022/09/19

 

 昭和の高度経済成長期、全国の一般道路沿いに建てられた食事や休憩のできる商業施設「ドライブイン」が、人気を呼んでいる。高速道路の登場で長く苦境にあったが、最近は高速のサービスエリア(SA)や「道の駅」とは異なり、個性的で昭和レトロな雰囲気がSNS映えすると話題に。車離れが言われる世代には、目新しく映るようだ。

(黒川絵理)

 

高速道開通で利用減

 

 高松市から東に約20キロの香川県さぬき市。瀬戸内海沿いに延びる国道11号を車で走ると、 要塞ようさい のような円筒形の建物が姿を見せる。

 

 ドライブイン「大川オアシス」。ブルーを基調とした店内に、しずく形のランプのオレンジが映える。海側には大きな窓があり、瀬戸内海の多島美が一望できる。

 

 

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 神戸市須磨区の会社員男性(37)は「最高の景色。1周回って新しい」と話し、古さが新鮮のよう。海を眺めながら、人気メニューのクリームソーダを注文した。

 

 オープンは1964年。ドライブの途中に立ち寄る客が相次いだ。85年に大鳴門橋、88年に瀬戸大橋が開通すると、本州から観光バスも押し寄せた。2階の宴会場は昼食をとる団体客であふれたという。

 

 しかし2003年、近くに高松自動車道が全線開通すると、観光バスは激減。宴会場での同窓会や法事を支えに、運営を続けた。

 

朽ちかけたような外観と色鮮やかな内装、海の多島美のギャップがインスタグラムで話題になったのは20年頃。各地から若者が集まり、孫に連れられて、久しぶりに訪れる高齢者もいる。

 

 36年前から店を切り盛りする本村佳子さん(67)は「若い子が『かわいい』『きれい』と言ってくれ、驚くばかり。お客さんに魅力を教えてもらえた」と話す。

 

昭和遺産として

 

 ドライブインに明確な定義はなく、一般道沿いに広い駐車場を備え、食事や休憩ができる民間の施設を指すとされる。

 

 アメリカが発祥と言われ、イカーが普及した1960年~70年代の高度経済成長期、全国の国道沿いに続々と誕生した。64年の東京五輪の前年には、東京―名古屋間の1号沿いで、約2キロごとにあったという調査結果もある。

 

高速道路の整備に伴って客が減り、廃業を選んだ施設も少なくないが、近年は“昭和遺産”として再注目されている。全国のドライブイン約200軒を訪ね歩いて本にまとめたライターの橋本 倫史ともふみ さん(39)は「店に足を運べば、ドライブインが輝いた時代の活気と、その後の衰退の両方を同時に感じとることができる」と話す。

 

個人経営が魅力

 

 京都府舞鶴市の国道178号沿いにある「ドライブインダルマ」では、うどんやハンバーガーの自動販売がSNSで話題となり、若者らでにぎわう。行楽シーズンには各約100食を準備しても売り切れる日があり、店員の谷口真紀さん(51)は「遠方からわざわざ足を運んでくれる日が来るとは」と驚く。

 

 ドライブインは高速道路会社などが運営するSAとは異なり、個人経営が多い。近年は地域の観光情報発信拠点として市町村などが設置する「道の駅」も増えているが、橋本さんは「個人経営のため、店の形態やメニューも店主が思い思いに決めている。画一性がなく、自由さも魅力だ」と違いを語る。

 

 関西と中部を結ぶ自動車専用道の「名阪国道」。奈良県山添村の「ドライブイン山添」は大衆食堂で、焼き魚や煮物など、20種類以上の手作り総菜を出す。長距離トラックの運転手だけでなく、スマホを手にした大学生らが最近はよく訪れるという。

 

  稲増龍夫・法政大教授(メディア文化論)の話 

「テレビを見る若者が減った現代で、大流行は起こりにくく、それぞれがSNSで面白いと思ったものが散発的にじわりとブームになる。ドライブインもその一つだろう。車離れが言われる若者にとって、ドライブインは逆に目新しく、訪れることで昭和文化を追体験しているのではないか」

 

 

 

 

 

 

食事+お風呂+仮眠場所と、あっちこっちで、お世話になりました!